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「日本の木と森を考える」江戸城天守木造再建への道 その5 パネルディスカッション

さて、パネルディスカッションへ。
冒頭、三浦先生から興味深いお話しが・・・

■三浦教授

先ほどの記事に書いた建築基準法。これがなんと
城郭建築のみならず、寺社建築も含めた
日本古来の伝統建築の足かせだとか!?

建築基準法の精神とは、一般住宅の10cm角の
木材で造られる木造建築の強度確保のためだったのに、
それを20cm、30cmという高い強度を誇る材を
つかった伝統建築にまで適用されてしまい、
木造で建てることを困難にしてしまっているそう。

強度の面では、十二分に耐震性があるにもかかわらず、
本来の伝統的な工法で建てられなくなってしまい、
要らぬ補強、たとえば鉄骨を加えたりだとか、
アンカーボルトで基礎を固定したり・・・

日本古来の伝統建築は、それだけで強度を
十分確保できていて、要らぬ補強はむしろ強度を
落とすことにもなってしまう・・・

いや、待てよ、先ほどの記事にも書いたとおり、
建築基準法には、第3条第4項にある適用除外規定で
復元建築でも適用除外できる可能性があるはず・・・

その障碍になっているのが、各市町村の姿勢。
建築基準法に従っていれば、お咎めはない・・・
ということで、敢えて適用除外申請をすることに
消極的なんだとか・・な、なんたること・・
許せぬ・・ぐぬぬぬっ・・

先ほど、沼田次長の話にあったような、
戦後植林された45年も経った木を木材にしようとすると、
一般住宅向けには、もったいないような
巨木に生長しているはずで、三浦先生としては、
城郭建築のような建築にこそ、ふさわしいと。

そして、耐用年限めいいっぱい使って、
その木の「いのち」を全うさせてあげたい・・・

通柱になるような大径木の木は、江戸城天守ですら
13本だけであって、たとえば屋根を支える垂木は、
一般に流通してもおかしくない4寸角(約12cm角)の材も
大量に必要になってくるわけですよ。

城郭建築をいわば活きた建築として、
世に活かすことで、木材の需要を押し上げ、
日本の森林をきっちり管理できる一助にもなるわけ。

■沼田次長

続いて「公共建築物等木材利用促進法」によって
木造建築の問題に関して、国土交通省や文部科学省との
関係が大きく変わった、と沼田次長はおっしゃいます。

官庁の建造物として建てる場合、国土交通省の官庁営繕事業
に当たるそうですが、木造としての建築基準を
策定したそうですし、文部科学省では学校建築の場合の
木造建築の基準作りを進めているのだそうです。

そして、城郭建築等の場合、技術的にはOKでも
お役所仕事にありがちな・・前例をつくりたくない
という二の足踏みは実際あるとのことでした。

これには、現在の各自治体の建築に関わる方が、
先ほどの公共建築物には木造は使わない、とした
戦後直後の方針の影響で、木造建築に関わったことがない
人が多いことも、二の足を踏む理由になっているみたい。

ぜひ、政府からその意識改善に向けたサポートを
強くお願いしたいところですね。
もはや、天守・櫓など城郭建築だけではなく、
日本の伝統建築のDNAを守るという大きなテーマ。

ここで、コーディネータの野村氏から、
城郭建築を建てる技術力のほうはどうなのか・・?と。

■三浦教授

城郭建築や寺社建築を手がける匠は居なくなった?
と誤解される向きもあるそうですが、
優秀な宮大工の集団「日本伝統建築技術保存会
という会があるのだそうです。知ってました?

この団体に三浦先生も所属しておられ、
この会の宮大工さん方にお話を聞いたところ、
悩みが2つあるんだそうです。それは・・・

ひとつは、仕事先がない。
腕を振るいたい現場が乏しいのです。

決して宮大工さんが居なくなったのではなく、
木造で建てようとする発注元が激減したわけです。

それは、もうひとつの理由である建築基準法とも
関係していて、建築基準法のシバリで木造建築を
断念する例もありますし、仮に木造であったとしても、
法のシバリで伝統建築として腕を振るえない・・・

今、日本の森林は50年近く経った木が鬱蒼とし、
腕を振るう機会を待ちわびている匠が居るにもかかわらず…
木も人も活かすことができていないのです。

宮大工の皆さんは、きっとやりがいのある
プロジェクトを待っている。江戸城天守再建は、
おそらく宮大工の方々にも、大きな希望になるでしょう。

続いて、沼田次長。

■沼田次長

木造建築を増やしていくということに当たり、
大学で設計を学び、設計事務所等に勤める方は多いですが、
木造に限って言うと、極めて少ないのが現状。

木造に理解のある建築士をどう増やしていくかが
林野庁としての課題でもあるし、
もちろん、法制度の適正化も課題のひとつ。

たとえば、カナダでは木造で10階建ての建物を
つくることができるそうです。事実、法隆寺五重塔は
1,500年も現役で使われているわけであって、
木材は使える建材なんだという環境を整えていく、
ということを進めていきたいとのお話しでした。

最後に、木材に関して「木は伐らないほうがいい」
という考え方について野村氏から問題提起。
本当にそうなのだろうか?

■小椋教授

木を伐っていけないというのは、木がないときの考え方。
大切なのは、木材の需給バランスを考えること。

もちろん、木が足らないときには需要抑制が必要だが、
今はむしろ、森林資源が過剰であり、
どんどん木材を使うべき、ということでした。

これ、個人的にはかなり目からウロコ。
だって、木を伐る=環境破壊って思いません?

たとえば、どこぞの山城を整備するに当たり、
木を刈っちゃいますなんていうと、自然保護団体が
剣幕変えて怒ってきそうじゃないですか。

でも、そうじゃないんだ、と。森だけじゃなく、
草原も必要なわけで「野」が消え「林」になることで、
消えていく生き物もいるわけですよね。

このまま木を使っていかないと原生林化が進み、
要は放置された状態が進むだけ。適度に使って
経済の仕組みをつかって、森林を管理するプロセス、
これを回すことが必要なんですね・・・

そのプロセスの一環として、木造で天守をつくれれば、
もちろん、城郭建築好きにもうれしいですわなぁ。

さらに特段、城郭建築好きじゃなくても、
日本の伝統建築の潜在能力のすごさを理解し、
誇りに思えるのではなのではないか、と思いますね。

最後・・わたしから質問させて頂きました。

■nikko81からの質問

今、木造での復元はかなり潮流として
出来上がってきている感があり、他城の櫓や
城門の木造復元とも連携していくとよいのでは?
と思って、そのあたりの取り組みを質問しました。

結論から言うと、かなり難しい。

これには「節」の問題があるようで・・・
江戸中期から明治にかけて、節がない柱が
重宝されだしたそうですが、本来、寺社建築も含め、
古来より節のあるなしは、あまり区別して
こなかったんだそうですね。

事実、国宝に指定されているような
古建築では、節のある柱がたくさんあるのだとか。
もちろん、城郭建築も例外ではなく、
節のある材もたくさん使われるものなんだそう。

三浦先生がおっしゃるには、無節で天守の芯材になる
ヒノキの見つけるのは困難だが、節にこだわらなければ、
江戸城天守に必要になる大径木も見つかるはず、
と考えておられました。

ですが、この「木造=節のある木材じゃないとダメ」
という無節信仰が強いそうで、かつて三浦先生も参画した
復元プロジェクトでも、無節にこだわるべからずという
ご主張が聞き入れられなかったこともあるそうで・・・

逆に聞き入れられたところでは、当初予算の1/3で
復元が成り、驚かれているところも。

あとは、先ほども指摘があったような、
建築基準法の除外適用もできるのにあえてしなかったり、
申請して許可がでているのに、自治体の意向で
むりやり建築基準法に合わせてしまう例も。

むしろ、この江戸城天守再建活動を通じて、
あるべき城郭建築の木造復元活動とは何か?を
模索していきたいということでした。

なるほど・・・江戸城天守をひとつの事例として
よりよい木造復元につながるとさらによいなぁ!

実に・・・実に有意義な時間でありました。
大阪人ですが、江戸城への想いを深くした1日。

ま・・秀吉の大坂城はどうしたって、
再建はムリですからね。その点、江戸城は恵まれてます。

図面や絵図が実に豊富、天守台にコンクリ天守が
建てられていないというだけでも、
当てはまる天守は、江戸城天守くらいなのでは?

いつの日か、天守と・・本丸御殿の一部
くらいは再建される日が来ることを願いたいですね。

しかし、こう材の話を頂くと、いろいろ反芻します。
伏見地震で豊臣伏見城が倒壊、豊臣大坂城ですら、
一度倒壊、秀頼再建説があるのもうなづけるな、とか。

安土城天主、岡山城旧天守、広島城旧天守、
熊本城旧天守の材の種類は・・・とか、
現存十二天守それぞれの材の違いとか・・・・
福岡城二の丸隅櫓や熊本城宇土櫓は??

あ、ついついマニアックになってしまいましたね。
(今更??笑。)

文章ばっかりになりましたが、江戸城シンポジウム
これにて終了であります。続いては・・・
翌日の大坂城シンポジウム・・最近、城ばっかり(笑)

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