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「日本の木と森を考える」江戸城天守木造再建への道 その4 日本の森林・林業と木材利用推進。

さて、ご発表の最後は、林野庁の沼田次長より。

林業と公共建築物における木材利用の推進の立場から、
お話しくださいました。これまた、違った角度で
おもしろいお話でしたよ。

まず、国産材をもっと使いましょうというのが、
最初のメッセージでした。木を伐らないのがよいわけ、
じゃないのか・・・・

■日本の森林資源の現状

約40年前の1966年と2007年との比較で見ると、
天然林・自然林ともに増加はしているのだけれども…

天然林が1,329百万m3から1,780百万m3と
約1.3倍くらいの増加なのに対して、
人工林は、558百万m3から2,651百万m3と
実に4.7倍にも膨れ上がっているんですね。

もちろん、伐採もしているんですが、
圧倒的に需要が少ないということなんですよね。
蓄積されるばかりで・・

人工林を構成する木の樹齢を見てみると、
樹齢45年くらいの木が多く、このあたりの年代に
多く造林された一方、急激に需要が落ち込んで、
伐採されないまま、残っているということなんです。

ということで、人間だけじゃなくって、
森の世界でも高齢化が進んでいるんですね・・・
「使う・植える・育てる・収穫する」という
サイクルをどう回していくか・・が課題ですね。

■林業の国際比較

そんなあるなら使えばいいじゃないか、ということ
なんですが、国産材が使われにくい要因のひとつとして、
日本の森林は、山の傾斜角が急なのに加え、
森林の中の道と道の間隔が狭く、森林面積が
多いにもかかわらず、伐り出すコストが嵩むとか。

日本は森林面積が2,512万ha、年間1,760万m3だが、
ドイツは半分以下の面積1,108万haなのに、
木材生産量が4,810万m3にも達する林業先進国。

日本と同じく山の傾斜角が急なオーストリアでも、
386万haの森林に対し、木材生産が1,210万m3・・・
そして、木材需給率も高いんですね。

木材生産だけで、森を見ることはできませんが、
あまり日本の森林は木材という観点では、
活用できていないのかもしれません。

■林業再生と公共建造物

そして、その林業の再生を目指しているなかで、
課題のひとつに挙げられているのが、
公共建築物における木造率の低さ。

しかし、それは戦後すぐの政府方針に
端を発していたんですね。

1950年 衆議院「都市建築物の不燃化の促進に関する決議」
→官公庁建築物の不燃化を目指し、同年建築基準法制定

1951年 閣議決定「木材需給対策」
→都市建築物等の耐火構造化、木材消費抑制
 未開発森林開発推進(同年、森林法制定)

1955年 閣議決定「木材資源利用合理化方策」
→ 政府・地方公共団体が率先して建築物の不燃化、
  木材消費の抑制、森林資源開発の推進を行う

1959年 日本建築学会「建築防災に関する決議」
→ 防火・耐風水害のための木造禁止

これ、戦後すぐにはどの大都市でも激しい空襲で
一面焼け野原になり、木材需要が激増したため、
公共建造物はなるべく鉄筋にして、
民間に回したということ、そして、防災の観点から
木造を忌避してきたという背景があるんですね。

1950年代から60年代といえば、あの鉄筋コンクリの
天守が乱立した時代、ですよね。

もちろん観光目的だったり、燃えない天守を!
という市民の声があったのかもですが、
こういった木材を取り巻く時代背景があったことは、
近現代城郭建築史を語る上で、押さえるべき点とかも。

その結果、住宅を含む日本の建築物全体の
木造率が43.1%なのに対し、公共建築物では
実に8.3%しかなく(2009年度)、
高層建築物はほとんどないという現状。

個人的には、ちょっと木材の需給管理に
手を入れるのが遅かったんではないかと思いますが・・・

大規模木造建築の場合の耐火性と一般住宅の場合では、
同一には論じられないということに着目されるのが、
遅かったのも理由なのかもしれませんね。

そして、ようやく2010年に制定された
「公共建築物等木材利用促進法」によって、
木材の利用促進を本格的に図り始めたわけですね。

特に低層の公共建築物は、原則木造にすることとし、
政府・地方公共団体が整備するすべての建築物を
木材利用を促進すべき公共建築物と位置づけられました。

■木造建築のムーブメント

もちろん、城郭建築の復元は文化財としての
価値がありますから、建築基準法第3条第4項にある
適用除外規定に則れば、これまでも木造再建できる
余地はあったわけですけど・・・

やはり、こういう取り組みというのは、
流れがあるような気がしていて、
城郭建築の復元も、木造による史実に忠実な
復元の流れが出ていることと無関係ではないだろうな、
という気がしますね。城郭建築復元には、
追い風になっているんですね。

木造でと一口に言っても、城だけ見てると
なかなかこういう視点では見れないですものね。
かなり貴重な気づきを得た講演でした。

続いて、パネルディスカッション。

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