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城に関する基本的な立場。

さて・・・名古屋城について一通りまとめたところで、
わたしの城についての考え方について。

改めて全体を俯瞰すると、やっぱり城好きの中でも
少数派なんじゃないかなぁ・・と思う始末(笑)

■主な関心の範囲

城好きであることは、確かなのですが、
基本的にわたしの守備範囲は、近世城郭であって、
もともとの歴史的な関心である戦国中期以降とは、
若干のズレがあります。武田びいきだしね。

訪城する際に戦国時代への関心から向かう場合は、
必ずしも城好きとして、向かうわけでは
なかったりするんですよね。山城とかね。
アレはアレで、好きではあるんですが・・・

わたしにとっての「城」とは、建物としての城。
織田信長から始まる、シンボルタワーとしての城。

建物に諸外国の影響が色濃く残っていたり、
宗教的な影響が色濃く残る意匠ではなく、
俗世の日本人の明確な意思による表現物としての城。

いろんな意味で、ピュアな日本的な建築意匠の
到達点として、城郭が位置づけられると考えています。

■複眼的視点

わたしが城を見るとき、改めて思い返すと、
以下の3点で見ているなぁ、と気づきます。

・歴史的視点
・デザイン的視点
・日本建築としての視点

重要な点は、城を歴史的視点、つまりは
文化遺産としてだけで捉えないこと。

一般的に価値があるとされる「城」は、
重文(重要文化財)や国宝に指定されていて、
安土桃山~江戸初期の歴史的建造物
としての価値が認められています。

なんですが、純粋にデザイン的にカッコいいという、
デザイン的な要素もわたしの中では
評価のかなり大きなうウェイトを占めています。

さらには、規模の面でも技術の面でも、
日本建築の最高峰、フラグシップとしてのすばらしさ。

わたしが好きな城・・・というと、
豊臣時代の大坂城、岡山城、広島城、
熊本城、松江城、金沢城と織豊時代から
江戸初期の意匠の城が多いです。

城についてのいろんなコラム等を読んでいて、
すごく感じることは、実に歴史的観点一点でしか、
城って語られないなぁ、ということです。

■文化財至上主義

特にわたしがそれは違うでしょと
感じるのは「文化財至上主義」とでもいう考え方。

歴史好きや歴史の専門家、学芸員さんにも
けっこうこの手の考え方が見受けられるように思います。

つまり、建物がないという結果(状態)こそが
歴史の結果であり、文化遺産。
これにいかなる手を加えるべきではないという考え方。

歴史人のこのあたりのコラムなんかも、
この手の考え方に含まれるでしょう。

一度見た意見で、城跡に何か再建をするんだったら、
歴史上の人物の手紙(の失われた部分)も
造ればいいじゃないかというのを見て、仰天したことが。

これなんかも、文化財のどこに歴史的・文化的価値が
あるかの本質をついていない議論。

手紙の例だと、特定の誰かが書いたことに
意味がある一方、建造物は特定の個人が造ったかではなく、
伝承された技が最も価値のあるはずなのです。

わたしにとって、櫓がないのこそがいい、
というのは、原則的にありえません。

櫓はあるべき(過去にあった)城でないのは、
(景観その他は別にして)ただのパーツの欠損。

たとえば、サモトラケのニケ

頭部も腕も欠損していて、どんな表情をしていたかは
わからないままであるので、あのまま鑑賞するしか
ないわけで、仮にこれが見つかったら?

いや、頭はないほうがいい、なんてあるわけない。
わたしにとっての城に対する見方も、
これと同じような感覚です。

■「城」の価値

とここまで考えたときに、わたしが考える
城の価値って何なんだ・・・というと。

日本建築のフラグシップたる城郭建築をつくる
技の継承をすることがひとつ。

そして、過去にあった天守を正確に復元することで、
先人が目指した日本建築の美を現代でも目の当たりにし
手に触れられるという経験。

最後に・・これはなかなかコンセンサスが
得られないとは思うけど、そのような伝統の上に、
現代的な目的を持った城郭建築を新たに
築城することが可能になるということ。

伝統には、継続性と緩やかな進化が必ず伴うもの。
ただ昔をなぞって護っていうことが
伝統なのではないんですよね。

新たな城をつくることができたら、
理想の極みといえるでしょうねぇ・・・

■名古屋城の木造復元についての立場

ということを踏まえると、おのずと話が挙がっている
名古屋城の木造復元についての立場も
おのずと現れてくることになります。

いくつか目立った論調に対して、反論すると・・・

・今造っても、所詮「本物」じゃない

特に、先般の名古屋城での討論会との関連で言うと、
反対論にあった「今更つくっても本物じゃない」というのは、
まさに、城を歴史的観点でしか捉えていない典型。

つまり、江戸時代以前に建てられた城でないと、
本物ではないという時間軸で「本物」「偽物」を区分け
していることになります。

でも、本当にそうでしょうか?明治維新後の
廃城令で多くの城の建物が失われましたが、
それはあくまで、表現物としての城が失われたに過ぎず、
長きにわたり培われた技は、消え去ってはいないはず。

ちょうど、生物が体の一部を失っても、
遺伝子さえあればまた再生できるかのように、
日本建築の最高峰たる城郭建築を
生み出し続けられる文化的な遺伝子は、
プールされ失わずにあるはずだ、と考えています。

それにすらも「偽物」のレッテルを貼ることは、
匠の技そのものに対する軽視であり、
今を生きる宮大工の皆さんに対して、失礼な物言い。

本物とは、日本の歴史の中で培われ、育まれてきた技で、
建てられたモノではないでしょうか?

・RC造りの天守にも建築当時の市民の想いがある

一方で、戦後のRC造天守についても、
違った意味で批判の対象になりえると考えています。

大阪城(3代目)を皮切りに、戦災で失った
岡山城・広島城・名古屋城・和歌山城・福山城などなど、
いずれも、当時の市民の想いがあったのだろうと
いうことは、容易に推察できることですし、
その想い自体を無碍にするわけには行かないとは思います。

が、燃えない天守をつくる、壊れない天守をつくる
という当時の発想は、自然に対して制圧し
管理し超越しようとする、どこか思い上がった側面が
あったように思います。

それもまた日本の歴史ではあるわけで、それを残すことは
必要かもしれません。が、そのやり方では、
日本建築のDNAを将来に残すことは、できなくなります。

一時的にはなく、永久に。むしろ、復元に当たって、
本物志向によくぞなったなって思います。
危うく技が継承されずに断絶するところだったのでは。

じゃぁ、どうすれば?というと、現RC天守を移築して、
歴史博物館として活用しつつ、当時の部屋割りのままで、
使える建造物として、木造再建がベスト。

いずれにしても、現RC天守にもいつか寿命は
出てくるはずで、小手先で延命するよりは、
早めに見切りをつけて、木造に建て替えたほうが
結果的には良いと感じます。

こちらのように、財政面を指摘する声はあるでしょうが、
結局、初期投資の金額の大きさばかりを
クローズアップしているだけで、何百年という
長期的なスパンで捉えられていません。

また、最終的には実施判断は市民・県民の判断に
よるものになると思ってますから、税金で…ではなく、
再建のために、市民が追加で資金負担するというのが
前提になるとは思います。(要は市の財政云々とは別枠)

資材が高い、職人がいない、耐震構造が不明瞭・・
などというのは、できない理由を並び立てているだけで、
やるためにどうするかを考えれば、よいだけのこと。

特に職人不足などというのは、今までのツケが
きているわけですから、むしろ積極的に事業を起こして、
職人を育て、次世代につなげていかなくてはいけません。
やらない理由どころか、やる理由になる項目です。

パネルディスカッションについて

その意味では、パネルディスカッションにあった、
特別史跡の価値を向上する(いわば脇役としての)価値、
という見方にも、わたしは与することはできないなぁ・・・
と思いながら聴いていました。

結局、史実には忠実であるべきだというところには
つながってくるので、結果は同じなんですが・・・

ただ、実測図を残すという、天守のDNAをしっかり
残したという点は、わたしも当時の名古屋市の方が
賞賛されるべき点だろうと思います。

たとえば、姫路城はやっていたかというと、
やっていないわけで、たまたま天守が焼失しなかった
というだけであり、もし焼失していたら、
戦災で焼けた他の天守を同じ運命をたどっていたはず。

もちろん、燃えてしまった岡山城・広島城を
はじめとする城も実測図なんてつくっていないわけで・・・

よし、意外と(個人的には)うまくまとまった気が。
自分の中でもやもやしていた「城観」が、
けっこうはっきりしてきたような気がしました。

やっぱり、文章に落としてみるってのは、
思考の整理になりますな。

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