仙台宮城峡・マイウイスキー塾2011 (2)
今回のメインの講師をしてくださるのは、
地元仙台がご出身の伊藤三郎先生。
宮城峡蒸留所ができた1969年にご入社、
すぐに余市蒸留所で技術指導を受けられたあと、
各工場やニッカの青山の本社勤務もされたとのこと。
政孝翁の直接の薫陶を、お受けになられたのでしょうね。
2005年からマイウイスキーの講師のご担当を
されているそうで、講師としても長いキャリアを
お持ちなのですねぇ。
まずは、新川川の見学から。
ヘルメットもかぶるのですが、もちろんニッカ印。
清らかな川・・ですが、実際は新川川を流れる水ではなく、
地下を流れる伏流水を原酒の仕込みに使っています。
これが取水口。3つほどあるこの取水口から、
水を汲んでいるんですな。
ニッカファンなら誰しも知っている・・・
宮城峡蒸留所の建設決定のエピソード。
あの政孝が水を汲んで、ハイニッカの水割りを
口に含み、数ある候補地があったにもかかわらず、
ここだ!と決めた、伝説の場所!
ここで、宮城峡蒸留所についてのお話から。
広瀬川と新川川の合流地に17万8000m2という
広大な敷地を誇る宮城峡蒸留所。
多くの敷地が貯蔵庫で占められ、貯蔵庫が26棟、
内18棟を貯蔵庫として使っていて、
以前は75,000樽ほどあったそうです。
最近は、原酒が出て行くほうが多くて、
45,000樽くらいにまで減っているのだとか・・・
いきなりブームになると、ウイスキーは
シンドイよねぇ・・・
宮城峡蒸留所、そういや入ってすぐは敷地に入れず、
ぐるーーーっと、回ってこないと入れない、
妙な敷地になってます・・よね?
あれは何でか?その謎の鍵は、あの鎌倉山が
握っているのです・・
竹鶴政孝は、はじめから腹づもりがあったようで、
国道からすぐに入った場所を正面とする案を
かたくなに拒んだのだそう。
政孝はあの鎌倉山を使わない手はない、
鎌倉山を借景とし、お迎えするお客さまにまず
眼に入るようにすべきではないのか・・と。
なるほどなぁ・・・客人へのもてなしのことを
考えてあのレイアウトができたんだ。さすが・・・
伊藤先生も数ある工場に見学をしたそうですが、
こんな工場はご存じないのだとか・・
電信柱なども地下に埋設し、景観には
建設当初からこだわっていた様子。
更に、この敷地なだらかな坂になっていますが、
これも敢えて水平にはせず、自然のままの地形の上に
建物を建てたんだそうです・・こだわりがスゴイ。
さて・・このあと、貴重なカフェスチルの見学。
これが見たかったんだよぉ。じゃん。
が、かなりの金属音がして聞き取りづらい・・・
伊藤先生の声はスピーカーを通して聞こえるのだけど、
そっちの声を拾っておくべきだったなぁ・・と
あとから気づいたりしたのですが(爆)
精留塔ともろみ塔の2基の塔で1セットで、
もろみ塔でまずアルコールを分離させるんですが、
24段あるもろみ塔の上からもろみを流し込むとともに、
下から熱い蒸気で熱していくんですね。
各段の床には、小さな穴が多数開いていて、
温度の低いもろみと気化した水との間で熱交換が起こり、
もろみは温度が上がってアルコールが気化して、
もろみ塔の上へ上へとアルコールが上っていくわけ。
で、アルコールが抜けた成分がもろみ塔の下に
溜まるってわけですな。こうして、まずアルコールを回収。
そのあと、アルコールを含んだ蒸気は精留塔に入り、
再度蒸留する工程に入っていきます。精留塔は42段。
一旦、冷やされたもろみはまた熱せられ、
気化して一段上がり、またもろみをかぶって冷やされ、
また蒸気で熱せられ一段上がり…を繰り返し、
32段目くらいになると、95%くらいにまで濃縮。
てことは、もろみを加え蒸気を加えていくと、
連続的にどんどんアルコールを取り出せるってわけ。
1963年グラスゴーのブレア社の文字。
ニッカがブレア社にグレーン用のスチルを注文した際、
発注者が竹鶴だと知るや、旧式のカフェスチルを
用意した・・・というのも有名なエピソード。
ここがアルコールを取り出すところ。
もちろん、取り出し方がアナログなので、
アルコールのみが必ずしも取り出されるわけではなく、
逆にそれが、香味成分が豊かなグレーン原酒を
取ることができることにもなったりするんですよね。
ちょうどこの頃はウイスキー消費量もどんどんと
伸びている時代、3年後には2号機のカフェスチルも
導入するほどになったんだそうです。
連続・・と言っても、年中動いているわけではなく、
1週間単位くらいで一度止め、洗浄するそう。
そして、一から蒸留を始める際にモルトを入れることも
あるわけですね・・これが、あのカフェモルト。
ニューメイク。カフェグレーン原酒。
できたての95%…じゃさすがに飲めないので(笑)
樽詰めする63%で頂きますよ。
もちろん度数は高く、樽詰め前なので
うっ・・とくるけれども、ニューポットほど、
厳しくはないな・・という印象。
うーん、貴重な見学でした。
こちら、アルコールが90%以上にも達するため、
「危険物製造所」に当たるんですね。
普段、見学できないのは
こういうことも理由だったりするわけです。
さて、このあとはモルトウイスキーの製造工程。
ここは一般見学でも見れますが、
ガラス越しではなく、中に入らせていただきます♪
キルン塔。まぁ、いまどき国内で製麦はしませんよね。
ニッカもヨーロッパから輸入しているんですが、
イギリス・フランス・ドイツ・オランダなど。
以前は、オーストラリアもあったそうです。
オーダーする際には、麦芽1トンを乾燥させるのに
何kgのピートを使うかで指定をするのだとか。
そこでサンプルを取り寄せ、フェノール値を測定して
確認したうえで、買い取るしくみ。
そのほか国産の大麦を使わない理由として、
たんぱく質が多く、でんぷんが少ない大麦しか
収穫できない、というのも理由としてあるようです。
たんぱく質が多いと、雑味成分のもととなり、
歩留まりが悪く、さらにはコストも高い・・・
ま、デモ用にピートや乾燥のようすは、
見ることができますが・・・
ピートって、切り出すときには
ざらざらした羊羹のような感覚なんですって。
ピートは、煙はよく出るのですが
火力があまりないため、温風も一緒に送って、
乾燥をさせていたんだそうです。
ピートで燻している様子は、絵的ではあるのだけど、
現場で働いている人にとっては、煙まみれのサウナ…
のような環境で、非常に厳しい環境だったとか。
また、スコットランドと日本では、植生が違うので
ピートの成分も違うので、煙の香りも違う・・のかもね。
原料を溜めておくサイロ。ほー・・・
そうだったのかぁ。あまりじっくり
見ることはなかったな。
宮城峡のマッシュタン。上の管の片方が温水、
片方が粉砕されたモルトをどさっと投入するところ。
もちろん、ニッカでも一番汁、二番汁、
そして、三番汁を次回の糖化工程に回して無駄なく
回収するのは同じ。
仮に100%糖分を取り出して、アルコールを
取り出せたとしたら、モルト1トンから
約400ℓのアルコールを取り出せるのだとか。
どこまでこの値に近づけるか・・・が腕の見せ所。
が、細かい調整は全部コンピュータ制御。
制御室のモニタの内容は撮っちゃダメ・・と
いうことでしたが、わずかな調整もコンピュータを
通してコントロールをしているみたい。
仕込から発酵、蒸留までの工程をわずか2人で
動かすことができるとか・・・!!
ある意味、余市と違ってかなり近代的な
装置になってるんだなーという感じがしましたよ。
で、お約束の麦汁。正直、これは毎回頂くんだけど、
まぁ、そう美味しいもんでもないんだよね・・
ちょっとしたウンチク。100gのグルコースから、
どれだけのアルコールが取れるか。これが51gだけ。
残りは、CO2なんですよね。
ウイスキー以上にビールの発酵でできた炭酸ガス。
どうするんですかね・・というと、昔はそのCO2で
炭酸飲料を作っていたんだそうです。へぇ!
が、今では業務用のガスボンベに使うのだとか。
続いては、発酵タンク。
またこれも毎回出てくる、気の抜けた
ビールのような・・・もろみです。
酸っぱさも感じるのですが、これは酵母の発酵に続く
乳酸菌による乳酸発酵の仕業。
これもまた、ウイスキーの香味成分のひとつとして、
大事な成分なのですよ。むむ。
発酵槽では、もりもり発酵中。
ポイントは「適度に」乳酸発酵を進めること。
これだ大事、というのがニッカの立場。
そして、乳酸発酵が進む環境を人間が制御することが
ある程度はできる・・ようになってるんだそう。
ということで、話はステンレス槽と
木桶槽の話へ・・・
当然昔は、そういう制御ができませんから、
木桶で乳酸菌を育んだほうがよかったわけですが、
仕組みと技術さえ分かれば、木桶である必要はない
ってことで、ニッカではすべてステンレスを
使用しているんですね。
ニッカって、意外とシステマチック。
余市の泥臭いつくりの一方で、最新の技術も導入。
古さと新しさが混在する、新しい側面を見た気がします。
続いては、モルトの蒸留・・の前に、
ちょっと切ろうかな。
« 仙台宮城峡・マイウイスキー塾2011 (1) | トップページ | 仙台宮城峡・マイウイスキー塾2011 (3) »
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 武田氏館西曲輪発掘調査現地見学会 + 桃と桜と信玄公 3/18(2017.06.03)
- 2017年・・・・もまた濃すぎて ~ 2/10-12 会津⑤ 御薬園・会津武家屋敷 with 絵ろうそく(2017.05.20)
- 2017年・・・・もまた濃すぎて ~ 2/10-12 会津④ 吹雪の会津若松を彷徨う(2017.05.06)
- 2017年・・・・もまた濃すぎて ~ 2/10-12 会津③ 鶴ヶ城縄張考察・・・武田と丸馬出を求めて(2017.05.06)
- 2017年・・・・もまた濃すぎて ~ 2/10-12 会津② 絵ろうそくまつり@鶴ヶ城~(2017.05.06)
「グルメ」カテゴリの記事
- 甲斐城攻めリベンジ2015!④水信玄餅~岩殿山城(2015.12.20)
- 2014夏の札幌 … スノーロイヤルを堪能☆(2015.01.18)
- THE NIKKA 40年。(2014.11.24)
- 竹鶴MUSEUM BAR TOKYO&BLACK NIKKA BAR - THE COLD(2014.08.17)
- ソサエティ・羽生/軽井沢。(2014.03.22)
「イベントレポート」カテゴリの記事
- 去年の今頃はシリーズ(8-2) 講演:恵林寺講座 平山優先生に聞く武田信玄公 品第一(2017.03.16)
- 去年の今頃はシリーズ(8-1) 講演:恵林寺講座 平山優先生に聞く武田信玄公 品第一(2017.03.16)
- 講演:第86期「歴史文化教室」 武田勝頼の滅亡と景徳院 … 景徳院 武田勝頼・信勝・北条夫人供養塔の研究成果(2017.03.11)
- 「作曲家 植松伸夫の創作の軌跡」(2017.03.06)
- 講演:日本の木造建築技術の至高・江戸城天守復元(2017.03.06)
コメント
« 仙台宮城峡・マイウイスキー塾2011 (1) | トップページ | 仙台宮城峡・マイウイスキー塾2011 (3) »
見たことが無いところばかりですー。 うーん。行きたいなぁー。マイウイスキー!
投稿: ウイスキーねこ | 2011.12.31 17:31
nikko81です。
●ウイスキーねこさん
ぜひ!テンション上がること間違いナシです。
応募するところからはじめましょう!
休みが入れられるかは・・あとで必死になって
入れないといけないですが(笑)
投稿: nikko81 | 2012.01.05 01:43