究極の利き醤油の会 第3弾 鰹節編。
続いては、鰹節のお話を田中さんからして頂きます。
田中祐司さん。
昨年で一般商社のサラリーマンをされていたそうですが、
家業の鰹節問屋に入社。海産物の卸売業をされているそうです。
さっそく、鰹節ができるまでを
解説していただきます。
1)鰹節の製造工程
なかなか、鰹節のできるまでって知ってるようで、
知らないもんですよね・・・
まず、製造工程で、関東と関西とで違うということ。
関西で主流の「荒本節」に対し、関東では
「本枯節」というより手間がかかる鰹節が主流。
荒本節は、鰹を捌いて骨を抜いた後、
燻しながら乾燥させる焙乾と呼ばれる行程で
完成するのに対し、本枯節はそこから更に、
整形・カビ付け・日乾という工程を経ていきます。
焙乾までが2~3週間なのに対し、
日乾まで終わるのに、約半年掛けている・・そう。
最後のカビ付け→日乾は、何度も繰り返されて、
ようやく完成するとのことで、焙乾から後の作業が
どれだけ手間がかかってるか?がよくわかりますよね。
こうして約半年掛かって、鰹節になる頃には、
水分が抜け、脂分が抜け・・元の約16%になってます。
荒本節の段階で20%にはなっているのですけど、
そこから更にギュギュッと絞り上げます。
では、各工程を・・生切り。
頭をカットするのは機械で行いますが、それ以降、
内臓を取って三枚におろし、背と腹に分ける
ところはすべて職人さんの手によるもの。
ここで、ヘタクソだとできあがった鰹節も
ヘンなカタチになっちゃうので、何気に大事なトコ。
そして、煮熟。さばいた鰹を籠に入れて重ね、
80℃くらいに煮立てたところに投入、徐々に温度を上げ、
最終的には、97~98℃で約1時間煮込みます。
魚に含まれる細菌・酵素をここで
失活させておくためにも、大事な工程。
ただこれ、いきなり100℃近辺で煮てしまうと、
身が割れてしまうなど、痛みの原因となるのだとか。
この後乾燥するのだけど、その前に骨抜き。
小きな骨は煮熟時に取れるのですが、
大きな骨はなかなか取れず・・
でもそのままにしておくと、乾燥させて
身が収縮する際に骨は収縮しないので、
ここでも身を壊したり、節が曲がったりする原因に。
ということで、こんな風にピンセットでひとつずつ、
丁寧に取っていきます。うわぁ・・細かい作業!
そして骨を抜き取った後には、さばいたときに
余って出る身をすり身にして練りこみ、
形を整えるのだとか・・細かい作業が続きますなぁ。
ようやく、乾燥作業・・焙乾に進みます。
三段あるいは四段の燻し塔に入れて、
1回4~5時間を15回も繰り返し燻していきます。
まずは、一段目から順に何度か燻した後に、
上へ上へとシフトさせていき、最終的には15回。
もちろん、上に行くほど温度が緩やかになっていくそう。
ここまでで荒本節としては完成。
ですが、まだまだ本枯節になるには、長き道のり・・
まずは表面を削って整形してカビをつけやすくした後、
温度・湿度が管理されたカビ付け庫へGo!
この中では、鰹節にとって有用な菌が、
空中を浮遊しているそうで、2週間くらい寝かせて、
カビをつけ、繁殖させていきます。
2週間したら、天日干しにして乾燥。
そしてまた、カビ付け庫に。これを最低でも4セット。
そりゃ、何ヶ月も掛かるわなぁ・・
こうすることで、更に脂分や水分を絞っていき、
旨味成分を凝縮していきます。
重量にしてわずか数%ですが、この違いで、
鰹節としての香りや味わいの上品さが生まれるんです。
なるほどねぇ・・
で、最後に鰹節が冷奴にベストマッチするワケ。
まずは・・旨味。
脂が乗って美味しい・・・という鰹は、
鰹節には適しません。それは、鰹節にしたときに、
脂の味が勝ってしまって、旨味が負けてしまうそう。
それだけ鰹の持つ「旨味」を極限まで凝縮させ、
イノシン酸・アミノ酸を豊富に含む鰹節は、
美味しさを引き出す調味料という、
裏方役に徹し、豆腐の美味しさを引き出します。
もう1点、香り。
醤油は300種類・・・ということですが、
鰹節も負けていません。こちらは約90種類!
種類こそ少ないですが、鰹節にもこんなに
香味成分が豊富だなんて、思いませんでした・・
香りは主に焙乾する際につく香ばしさや
スモーク感が中心なようですが、
さらにカビ付けの段階で、香味成分のうち、
刺激が強い香りを抑えられるそうですね。
だから、本枯節のほうがより洗練された上品な
香りになるようです。ほぅほぅ。
また、地球20周分も生涯で泳ぐといわれる
鰹は豊富な蛋白源でもあり、栄養も抜群。
ということで、淡白な素材な冷奴の
パートナーとしては、ぴったりなわけです。
オーソドックスな組み合わせには、
ちゃんとした理由があるんですねぇ。
ここで、お客さんから質問!
たこ焼きには荒本節、本枯節どっちがいーの??
田中さんのお答えは、荒本節。
・・・というのも、ソースやマヨネーズのような
味の濃い調味料が使われるため、鰹節も
魚臭さが残る荒本節もいいんじゃないかと。
ただ、ウチはソースやマヨネーズコテコテの
たこ焼きよりは、生地にだしを混ぜてつくる
「はんなりたこ焼き」派なので、本枯節のほうがいいかな。
さて・・・ここで、一旦休憩。
実食タイムに向け、鰹節削りマシンが稼動しました☆
あたりに、鰹節のいいかほりが~(*´Д`)
動画も!
実際に削っている節も見せていただきました。
表面はカビ付けしているので、ゴボウみたいですが(笑)
[写真間違ってたので、訂正しました]
なんだか、宝石(はいいすぎか)のような、
キレイな色をしていましたよ!
で、頂いたのがこちら。
A:本枯節、B:油多節、C:荒本節。
ちなみにいちばん左は、本枯れ節に湯を足したもの。
Bの油多節は、本枯節の工程は経ているものの、
油が多めの節でできたもの。
鰹自体は好きな魚なので、どれも美味しいと思うのですが、
確かに、本枯れ節は上品で華やかな香りがする一方、
荒本節は魚からできてるな!という感じ。
モノによって使い分けるのがよくて、
どっちが絶対イイというモンでもないかな・・
という感じがしました。
ちなみに湯を入れてだし取っただけのスープ。
少し醤油を垂らすと、これだけで実に
美味しくいただけました。鰹節、すげぇ。
うむむ・・・と舌鼓を打ちながら、
最後の豆腐編に突入!
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