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Whisky LIVE! Tokyo 2011 ニッカセミナー編 ~ 仕事 ~

続いては、品質にかける想い。

■仕事

竹鶴政孝は、生涯技術者・・というか、
愚直で信じる道に没頭する職人のような人。

戦後すぐのこと。当時はウイスキー原酒が、
一滴も入っていないイミテーションウイスキーでも、
「ウイスキー」(三級ウイスキー)を名乗れました。

P1190912

しかし、あくまで原酒をたっぷり含んだウイスキーに
こだわり通そうとしたため、経営が悪化。

戦前にサントリー(当時壽屋)ですら、
最初に出したサントリーウイスキー白札が
飲みにくいとオオコケしたわけで・・・

マーケット側のウイスキーを受け入れる環境も
原酒がいいから、必ず認められるというものでも
なかったわけですね。

従業員への給与も滞りはじめ、
周囲からしきりに三級ウイスキーを出すよう、
説得された結果、ついに苦渋の決断をする政孝の弁。
(ニッカウヰスキー社内報より)

 わしは取りたてて取り柄のない男かもしれん。
 だが、ウイスキーづくりに関しては誰にも負けんつもりだ。

 わしがどんなウイスキーをつくってきたか、
 技師の諸君はよく知っておるはずだ。
 他の諸君も知っておいて欲しい。
 わしは本格ウイスキーしか手掛けなかった。
 ウイスキーの名を騙って模造ウイスキーを造ることなど
 良心が許さん。

 ウイスキーの名に恥じぬのは、本物の原酒を
 たっぷり使った本格ウイスキーだけだ。
 だからわしのところでは一級ウイスキーしか
 造ってこなかった。その気持ちは今も変わらん。
 これからも変えるつもりはない。
 だが、諸君も知ってのとおり
 世は三級ウイスキーの時代だ・・・

 わしは耐えうる限り耐えてきた。
 三級ウイスキーという名ばかりの製品は出さずに、
 誇りを貫いてきたつもりだ。
 だが、それも限度にきてしまった。

 会社の将来を考え、われわれの生活を
 支えるためには、やむを得んのだよ。
 わが社でも三級ウイスキー発売に踏み切ることにした。
 諸君、ニッカウヰスキーの誇りを忘れず、
 この事情をよくかみしめて欲しい・・・

まさに竹鶴政孝、というかニッカの伝統を
体現した文章です。

如何でしょうか、考え方によっては、
市場が見えていないプロダクトアウトの発想と
思われる方もいるかもしれません。

しかし。

今、食べものや飲みものって、人工的なものではなく、
素材に忠実に、そして自然の力をうまく
味方に引き寄せたものが見直されてますよね。

ウイスキーを育てる自然への敬虔な気持ちを忘れず、
嘘偽りのない堂々としたものづくり。

そういうものづくりとして本来、あるべき姿に
最初からこだわり続けたのだろう、
と思うのです。クラフトマンシップっていうか。

その意味ではあらゆる手を尽くして、
市場開拓する鳥井信治郎の「やってみなはれ精神」とは
対照的だし、またその違いがウイスキー業界を
健全に盛り上げる原動力になってるのかな、とも。

サントリー的なマーケティング・広告重視型だけでも、
ニッカのような本物追求志向だけでも、
ウイスキー市場って、ダメなんだろうなと思うのです。

でもね、そういう不器用さが逆に
ニッカを愛おしく、応援したくなる所以で
あったりするのですけどね・・・

こんなものづくりができるなんて、
なによりカッコいいじゃないですか。

スコットランドで学んだ製造技術を買われて、
壽屋に入社した際も、消費地に近い山崎ではなく、
もっと北方での製造にこだわっていたそうですし。

10年の壽屋との契約満了を経て、高禄を捨てて、
自ら理想とする場所を探します。

当時の政孝の年俸は、4,000円。
総理大臣が1,000円だったそうですから、
ものすごい高額だったわけですが・・・

たどり着いた理想の地こそ、北海道・余市。
信じるウイスキーづくりに最も適した場所・・・
彼の判断基準は、その1点だけ。

創業時の余市蒸留所。ずいぶん違いますが、
真ん中くらいには現在の見学コースにもなっている
一号貯蔵庫が見えますね。

P1190929

ウイスキー事業は原酒熟成に時間がかかるため、
非常にキャッシュフローに厳しいため、
当初は、りんごジュースを造っていたことは有名な話。

ニッカ・・とは、設立当初の会社名、
大日本果汁株式会社の「日」・「果」をとったもの。

本物志向は、リンゴジュースにも及び、
ジュース1本あたり5個のりんごから搾られ、
当時では珍しい果汁100%ジュースでした。

栄養価が高いことから、札幌の病院などに
納品していたんだそうですね。
高価で大量に売れはしなかったようですが・・・・

それでも、高く買い取ってくれる政孝のもとに、
りんごは山のように集まったようです。

当時の写真。余市に行ったことがある人なら、
あ、あの場所にこんなにりんごが・・!?
と思いますよね。

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ニッカの社員の手を煩わせまいと、
買い取るりんごの数は、農家の自己申告に任せていたとか。
農家からの信頼も厚く、納品をお願いした以上の
りんごが集まったそうで、信じるほうも信じられるほうも、
おおらかないい時代であったということでしょう。

余市ができたことにより、モルト原酒を
つくることができるようになったわけですが、
政孝はブレンテッドが造れるようになってこそ、
一人前という考えを持っていたようです。

やもすると、ウイ好キーたちはシングルモルトや
シングルカスクを珍重しがちですが・・・

同じウイスキーを長く、飽きずに飲み続けられる、
という「定番商品」のためには、グレーン原酒が
どうしても必要だったわけです。

こだわって飲む側としては、一期一会の
シングルカスクもいいのですが、広く一般に飲んで
もらうためには、質の安定も大事な要素。

確かに、ブレンテッドは落ち着くというか、
個性が爆発しないので、飲んでて安心感は
あるかもしれませんね。

で、そのグレーンをつくるための蒸留器・・・
これこそ、あのカフェ式連続蒸留器。

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当初は西宮工場に設置され、後に(1999年)
宮城峡蒸留所に移設。

当時でもすでに最新式の連続蒸留器はあったのですが、
穀物由来の香味成分をふんだんに残した原酒を造るため、
あえて扱いやメンテナンスが難しく、作業効率も悪い、
旧式のカフェスチルを導入したのでした。

いまや、世界に数台しかないカフェスチル。
日本ではただニッカのみ保有する貴重な蒸留器。

このたびの東北地方を襲った地震で、
少し損壊があるかもしれないけれど・・・
強くたくましくカフェグレーンを
造りつづけて欲しいもの。

さて、2度目のティスティングは、
このカフェ式蒸留機で、あえてモルト原酒を
つくった・・というカフェモルト。

以前にも「シングルカフェモルト12年」という
製品がありました。

これがなかなか美味しかったのですが、
今度のアイツはシングルカスクで1994年蒸留。

P1190950

シングルカスク・・と久光さんが
おっしゃった瞬間、あたりがざわめきます(笑)

ボトルが描かれていますが、あくまでイメージ。
市販されちょりません・・で、これが美味いんだわ。

同時にティスティングをしていないので、
正確なことはいえないのだけど、
穀物感によるビスケットやクッキー的な甘さが
際立っていた12年よりももっと複雑。

P1190951

もっと樽熟成感だったり、バニラっぽくて
ウッディ、そしてコク深い甘さと、
カフェモルトらしい香ばしさが絡み合い、
より上品で、より奥行きが感じられますね・・

解説を聴くのに必死で、メモをちゃんと
取ってない当たりが、残念すぎる(笑)

でも・・なんかカフェモルト的なぁ・・
何かを・・出そうかな・・とか・・
企んでる・・らしいですよぉ・・ごにょごにょ。

セミナー終わったあとで、空席を見つけて、
真っ先にカフェモルトをお代わりしたことは、
いうまでもございません・・・

P1200006

さらに、余市をハイランドに見立て、
ローランドに相当する穏やかなモルト原酒を
つくりたい・・ということで、設立された宮城峡。

力強い個性を持つ余市モルト原酒と、
飲みやすいグレーン原酒のしあわせなマリアージュのために、
ふたりの仲人をさせたい・・・それが宮城峡モルト。

宮城峡のニューポットができたとき、
違うな、と一言。それはよくないものが
できたわけではなく、余市とは違う個性を持った
原酒ができている満足感から出る「違うな」。

宮城峡蒸留所が建設されたとき、
森の中に蒸留所を造るにもかかわらず、
なるべく木を切らずに、建設したのだそうです。

宮城峡蒸留所を建設したとき、政孝は75歳。
力強いモルト原酒をつくる余市。
穏やかで華やかなモルト原酒を造る宮城峡。
そして、飲みやすく飽きの来ないカフェグレーン。

この3つの原酒をつくることができたことは、
ウイスキーに生きた男として、
無上の幸せだったことでしょうね・・・

P1190964

原酒は10年経って一人前。
常々、そう評していたという政孝。

ウイスキーにその生涯をささげた男、
竹鶴政孝は、宮城峡の原酒がちょうど10年経つのを
見守ったかのように1979年8月29日、
85歳でその生涯を終えるのでした。

3つ目のティスティングは、シングルモルト宮城峡1990。
わたしの今年の幕開けウイスキーでした。
甘いレーズンやブルーベリーのような香りがたまりません。

さぁ・・・最終章。
仕事だけでなく、息抜きにも全力で取り組む、
竹鶴政孝の姿に迫ります。

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